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『天国の事情』 ファイル１・パートナーの事情 ＜＜２ index＞＞ |
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３ 「ったくぅ。今回はやられたよなぁー……」 翌日。 オレはいつものごとく霊界図書館にいた。 倶生(くしょ)ちゃんズを目の前に、オレはきのうのことをグチっていたのである。 「まぁ、いいじゃないですか。事件は解決したんでしょ？」 「課長さんの人使いの荒さは、今に始まったことじゃないでしょーが」 倶生ちゃんズはあきれ顔でいう。 「そりゃそうだけどさァー」 オレは不満顔でいった。 「だったら、ぐちゃぐちゃいわないでくださいよ。うっとうしいだけです」 「う……っ、キビシーなぁ。倶生ちゃん妹は」 オレがそういうと。 「私は“兄”ですよ。真希さん」 倶生ちゃん兄は腕を組んだ。 「ははっ。またやっちまったい」 ポリポリ。 オレは顔をかいた。 「いつも間違えますねぇ、真希さんは」 倶生ちゃん妹はため息をついた。 「本っ当、ダメなんだから、もう」 倶生ちゃん兄は軽くオレをにらむ。 「ははははは……」 オレはただただ苦笑いを浮かべた。 「しかし、今回はよかったじゃないですか。事件が早くかたづいたんですから」 倶生ちゃん妹がいう。 「まぁな。今回は召喚課のヤツが巻き込まれたおかげで、早い段階で地上治安課が動いたからな。でなきゃ、もっと犠牲者が出てたところだった」 「そうですね。もう少し犠牲者が出なきゃ、事件に疑いを持たなかったでしょうからね」 倶生ちゃん妹はうなずいた。 「ということは、課長さんの息子さん……海(かい)さんには悪いけど、松本さんが巻き込まれてよかったってことですかね？」 「そうなるなー」 オレは倶生ちゃん兄の言葉にうなずいた。 ―――海、か。 初めて会った時の瞳を思い出す。 まっすぐで強い瞳。 あんなヤツに会ったのは初めてだった。 あんなに本気でパートナーの心配をして。 勝手に捜査はじめて。 なんか少し、松本葵がうらやましい気がする。 とはいえ。 アイツ、何らかの処分を受けるだろうなぁ。 今回のことは、アイツにとっちゃ、越権行為だもんなぁ。 ―――と、その時。 「よっ、真希」 ポンッ。 誰かに肩を叩かれた。 オレは振り返る。 「海じゃないか。どうした？」 そう。 オレの肩を叩いたのは海だったのだ。 「いやー、まいったね。召喚課の課長にこってりしぼられちゃったよ」 海は苦笑いを浮かべた。 「当たり前だろ。ありゃ、お前、越権行為だぜ？処分は受けたのかよ」 オレがそうたずねると。 海はにっと笑ってこういった。 「召喚課、やめてきた」 ―――へ。 なんだって……？ 『召喚課、やめてきた』、だぁー!? 「おい、なんだってそんなコト……っ」 「あそこにはもう、俺のパートナーはいないからな」 海はあっけらかんと答えた。 「だったら、新しいパートナー、見つけりゃいいじゃねぇか」 オレがそういうと。 「もう見つけたよ」 ニコッ。 海は笑みを浮かべた。 そして。 「真希。俺をパートナーにしてくれないか？」 「はぁ!?」 な……っ、なんだって……？ 海をオレのパートナーにだぁ？ どーいう風の吹き回しだ!? 「ちょっ、ちょっと待てよ。そう勝手にいったって、課長が許可しなけりゃ……っ」 「親父には許可をもらったよ。真希がうなずけばいいってね」 「なぁにィ!?」 地上治安課の編成は森村課長に一任されてる。 つまり、課長がＯＫを出せばいいワケだけど……でもなぁ……。 「あのなぁ、オレのパートナーになるって、どういうことかわかってんのか？あの事件以上に危険な目に遭うんだぞ!?」 「わかってるよ、それくらい」 「わかってねーって」 フゥーッ。 オレはため息をついた。 「あのなぁ、バスターって仕事は、はっきりいってカタギの仕事じゃない。常に危険がつきまとう。命だって落としかねないんだぞ？」 「わかってるよ。親父にも聞かされた」 「だったら―――」 「でもな」 海はオレのコトバをさえぎった。 「俺は葵に何もしてやれなかった。助けてやれなかった。仇だって、結局はこの手でとってやれなかった。こんなんじゃ、俺、葵に顔向けできない。だから俺、バスターになって、葵のような目に遭う人をなくしたいんだ。これが俺の、葵への罪ほろぼしなんだ」 「―――」 まっすぐな瞳。 何にも負けない強い輝き。 生半可な気持ちではいってない。 ―――それに。 海の気持ち。 オレにもわかる……。 ―――…… 仕方、ないな。 「よろしく頼むぜ。パートナー」 スッ。 オレは海に手を差し出した。 「え……？」 海は驚いたカオでオレを見る。 にっ。 オレが笑うと。 海も笑みを浮かべて。 「こちらこそ、よろしく頼む」 ギュッ。 オレ達は握手を交わした。 ―――こうして海は。 正式にオレのパートナーになったのである。 これからどうなることやら。 -ＥＮＤ- |
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