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『天国の事情』 ファイル３・親子の事情 ＜＜３ ５＞＞ |
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４ 「………」 オレは子供達を見つめる。 無表情な子供達。 ―――しかし。 パチンッ！ 影山が指をはじくと。 ダッ！ 殺気立った瞳で一斉にオレに向かってきた。 ダダーンッ！ １人がオレに攻撃をする。 それをかわすと。 また別の１人が宙に浮いた体勢からすばやく攻撃をしかけてくる。 次から次へとくる攻撃。 様々なＥＳＰ能力。 影山が自慢するだけのことはある。 オレはひたすら攻撃をかわし続けた。 「どうした、ダーク・エンジェル。かわしてばかりいては、すぐにやられてしまうぞ？」 影山の不敵な笑いが聞こえてくる。 ちっ。 うるさいヤツだ。 オレはちらっと影山を見上げた。 「真希、危ないッ！」 バリバリッ！ 雷撃がオレを襲う。 「く……っ！」 オレはギリギリでそれをかわした。 ちっくしょー。 一瞬のスキも見せられん。 よく訓練されてるぜ、まったく。 そうこうしてる間にも、子供達は次々と襲ってくる。 オレは攻撃をかわしながら、彼らの様子をうかがっていた。 ダダダッ！ 攻撃をかわして低い体勢になったオレに、３人が一斉に襲いかかってくる。 そのすぐ後ろには残りの２人も構えていた。 「真希……ッ!!」 ―――今だ。 「氷塊符(ひょうかいふ)ッ！」 バババッ！ オレは３人に向かってすばやく呪符(フダ)を投げた。 「うわーッ!!」 よける間もなく３人が吹っ飛ぶ。 後ろの２人が吹っ飛んできた３人をよけた。 ―――が、オレはすばやくそのうちの１人の前に現れると。 ドガッ！ 「うオッ！」 みぞおちにひざ蹴りをくらわして。 スタンッ。 残った１人の前に立った。 「うオーッ！」 最後の１人がオレに襲いかかる。 バッ！ オレはそれをすばやくかわして。 「氷塊符ッ！」 「ぐオーッ！」 呪符を受けて、最後の１人も吹っ飛んで倒れた。 「……さすがだな。ダーク・エンジェル」 影山は変わらない口調でいう。 「少しオレをなめすぎたようだな」 フンッ。 オレは影山を見上げた。 「―――それはどうかな？」 「何……？」 ニヤリ。 影山は不気味な笑みを浮かべて。 パンッ！ 影山の手を叩く音が響いた。 「れ……廉!?」 「何!?」 オレは海の声に振り向くと。 スウ……ッと。 廉の姿か消えていくのが見えた。 「どういうことだ!?」 オレは影山のほうを見る。 「クックックッ……」 影山は何も答えず、ただ不気味な笑みを浮かべた。 そして。 ウィーン。 さっきとは別のドアが開く。 「な―――……ッ！」 なんとそこには。 さっきの子供達と同じ、 無表情な廉が立っていたのであった。 「キサマ、廉を肉体に戻して……ッ」 キッ。 オレは影山をにらむ。 「クックックッ……」 影山は愉快そうに笑った。 「廉……」 オレは目の前に立つ廉を見つめる。 何の感情も見えない瞳。 不気味なほどの無表情。 目の前の廉は、もはやオレ達の知る廉ではなかった。 「廉は私の最高傑作だ。まぁ、せいぜい頑張りたまえ。クックッ」 影山は不敵に笑う。 「―――」 「真希……」 海が困惑した顔でオレを見た。 「―――海。倒れてる子供達の保護を頼む」 「真希!?」 「頼んだぞ」 オレは海にそういうと、廉の前に立った。 「………」 「廉、やれッ」 「―――！」 影山の一言で、 廉の瞳は一瞬にして殺気立った。 しかし、カオ表情は無表情のままで。 バッ！ 廉はオレに襲いかかった。 ドガアッ！ ドゴオッ！ 凄まじいパワー。 さっきの子供達の比じゃない。 オレはなんとかギリギリでかわしてゆく。 しかし、正直キツイ。 ―――『最高傑作』、か。 「うおーッ！」 「く……っ」 ダダーンッ！ ガッガーン!! 廉の激しい攻撃は続いた。 「かわしていても、さっきのようにはいかんぞ、ダーク・エンジェル。クックックッ……」 高みの見物の影山。 「真希……ッ！」 海の心配そうな声が聞こえた。 ―――どうすればいい。 ただよけているだけではどうしようもない。 しかし。 廉のこのパワー。 さっきのようにやることはできない。 攻撃するしかないのか……？ しかし――― 佑子さんの、廉のオフクロさんの顔がよぎる。 廉を傷つけるワケにはいかない。 どうすれば……。 ドドォンッ!! ダンッ！ 「ぐ……っ！」 オレはよけた拍子に思いっきり仰向けに倒れた。 ババァッ！ すかさず廉の攻撃。 オレは左右に転がりながらよける。 立ち上がるスキがない。 ―――そして。 「うオーッ！」 ドガアッ！ 「……ッ……！」 「真希ッ!!」 廉の一撃がオレの左腕をかすった。 オレは左腕をおさえる。 く……。 これは、結構深いかも……。 「おおおーッ！」 廉がすかさずオレに飛びかかってくる。 やばいッ！ オレはギリギリのところで廉をかわした。 ―――その時。 ガッシャーンッ！ オレはよけた拍子に手に何かを引っかけて吹っ飛ばしていた。 オレと廉は反射的に音のしたほうを見る。 ペンダント―――いや、ロケットだ。 開いた状態で落ちている。 どうやら廉の首にかかっていたものらしい。 「………」 ―――ん？ 廉の様子がおかしい。 ロケットを見つめたまま、微動だにしない。 それどころか。 少しずつ廉の殺気がおさまっていっている。 どういうことだ……？ オレは警戒しながら起き上がる。 ―――…… ロケットには。 佑子さんの写真がおさめられていた。 今より少し若い。 「廉ッ！どうした!?何をしているッ!!」 「―――」 影山にさえも反応しない廉。 ただただロケットを見つめて。 ―――そして。 「……か……母、さ……ん……」 「―――！」 廉はそういうと。 バタンッ！ 気を失って倒れてしまった。 「廉……」 オレは立ち上がって廉のほうへと行く。 そしてオレは、ロケットを拾い上げた。 「………」 優しい微笑みを浮かべている佑子さん。 オレはそれを見つめると。 キッ。 影山をにらんだ。 「……海。行くぞ」 「ああッ！」 オレは廉のロケットをジャケットのポケットに入れると。 タンッ！ 床を蹴って飛び上がった。 海もすぐあとに続く。 「―――ッ！」 影山とその助手が驚いた顔でオレ達を見る。 すでに逃げ腰だ。 「風刃符(ふうじんふ)ッ！」 ガッシャアンッ！ 「ひぃ……ッ!!」 ガラスが派手に割れて。 オレ達は中に降り立つ。 影山は完全に腰を抜かしていた。 「こ……、こら待てッ！私をおいて逃げるなッ!!」 助手があわてて駆け出したのを見て、影山が怒鳴る。 しかし、助手は振り向きもせずに逃げていた。 「海。あっちはお前にまかせた。好きなだけやっていいぞ」 ニヤッ。 オレは笑う。 「了解」 ニヤリ。 海は笑みを返すと、助手を追いかけていった。 「……さて、貴様をどーすっかな」 オレは影山を見下ろす。 「………ッ！」 スッ。 オレは風刃符を取り出した。 影山はおびえきった目でオレを見上げている。 「覚悟してもらおうか」 「ひ……ッ！」 ヒュッ！ オレは影山に呪符を投げた。 「うわーッ……あ？」 影山は予想に反して痛みを感じなかったことにけげんそうなカオをする。 オレはそんな影山に向かって。 ニヤッ。 笑みを浮かべた。 ―――その時。 ハラ……ッ。 影山の頭にわずかにあった髪の毛が下に落ちていった。 「あ……ッ!!」 影山が頭をおさえて、がく然としたカオで落ちた髪の毛を見つめる。 「その頭、お似合いだぜ。ハゲ山博士」 「―――ッ！」 「貴様なんぞのために減俸処分にされてたまるかってーんだ」 フンッ。 オレは鼻で笑うと。 ストッ。 手刀を影山におろした。 「………っ」 ドサッ。 影山は気絶して倒れた。 「真希ーっ、こっちも終わったぞーっ」 海がズタボロになった助手をひきずりながらやって来た。 かなりハデにやったようだ。 「ごくろーさん」 にっ。 オレは海に笑みを向ける。 そして、オレはジャケットから携帯電話を取り出すと、ボタンを押した。 「あっ、もしもし。室町さん？あのさぁ、救急車とパトカー、用意してもらいたいんだけど」 |
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